チェルノブイリ研修報告

東京渥美組の5名の幹部社員が
6月4日から約3週間、チェルノブイリ原子力発電所で、
原発事故後の除染など安全処理技術の理論と実践を研修、
「報道機関向け記者説明会」を7月25日東京で実施
 

 

 総合建設業の有限会社東京渥美組(本社:東京都豊島区南大塚、代表取締役:舟戸仁、URL: http://www.tokyo-atsumigumi.co.jp/)では、5名の幹部社員が2012年6月4日(月)~6月21日(木)の約3週間、ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所(以下;ChNPP)(*1)及び附属するスラヴィティチ・トレーニング・センター(以下;STC)(*2)で原発事故後の安全処理技術の理論と実践を研修、6月25日帰国しました。

 

 東京渥美組は建設現場作業員約4.000 人を擁する総合建設業、渥美組のグループ会社です。これまでの自然災害や原発関連作業の経験では、平成7年1月の阪神・淡路大震災、同19年7月の中越地震等があり、多くの緊急性の高い事態の要請に対応してきました。今回の震災では福島第一原子力発電所(以下;福島第一原発)ならびに福島県内の瓦礫処理、除染作業に約100名が従事しています。

 

 今回のウクライナ、チェルノブイリでの原発事故後の安全処理技術研修の目的と、そのきっかけは、東京渥美組が建設現場作業に携わる企業としての立場から、原発関連安全処理技術のノウハウを有するチェルノブイリ原発と関連の深い、独立専門家グループのプレアデス社(Plejades)(*3)の存在を知り、同社に放射線防護や除染の理論と実践を学べる研修プログラムを依頼したことが始まりです。プレアデス社側も要請を受けた東京渥美組のこれまでの作業実績を評価し、その上でチェルノブイリ原子力発電所公団への仲介を引き受け、今回の研修が実現しました。

 

 研修ではチェルノブイリ事故後25年余の環境下で除染作業のノウハウを持つチェルノブイリ原発公団およびプレアデス社の専門家講師から、「ChNPP」ならびに同発電所に附属する「STC」で、除染(固形物、液体)、放射線防護、原子力発電所における緊急時対応等についての考え方や理論を、講義と実習を通して学習しました。

 

 日本人が同施設で原発事故後の安全処理技術研修を3週間もの長期にわたり、体系的に受講したのは今回が初めてと思われます。

 

 研修では、6月3日(現地時間)キエフ、スラヴィティチ現地入りしてから、まず、スラヴィティチ研修センターでのガイダンスと講習(理論)、チェルノブイリ原子力発電所及びその域内(ChNPP)での処理技術訓練と視察、およびチェルノブイリ立ち入り禁止区域(CEZ)( *4)数カ所の視察を経て、ChNPP、CEZでの除去作業実地訓練、汚染物質貯蔵管理の実地訓練、汚染廃棄物管理方法を研修しました。終了後全員がチェルノブイリ原発公団認定「放射性廃棄物管理者」及び「電離放射線作業安全資格者」の認定を受け、6月25日帰国しました。

 

 今回研修に参加したのはリーダーの東京渥美組代表取締役舟戸 仁、同取締役田村 修、同営業部加藤 正弘、同益子 聡、同岸 大介の5名です。この研修について舟戸 仁リーダーは「3週間に亘る専門家による講義と実践トレーニングで最も印象に残ったことは、ALARA(As Low as Reasonably Achievable)という言葉を常に聞かされたことです。この意味は、働く人の被爆を最小限に抑える事を最も重視するということで、すべての実習プログラムがこの安全思想を徹底することを基本として構成されています。現在、当社では約100名の作業員が福島の各地で除染作業に当たっていますが、今後は、今回学んだことを可能な限り実践に役立てる所存であり、放射線防護や除染技術のスキルを持った社員を増やして、日本の放射線環境下での解体や除染作業の専門家集団として社会に貢献していきたいと考えている」と述べました。

 

◆「東京渥美組 記者説明会」
   日時:2012年7月25日  13:30~15:00
   会場:KKRホテル東京「平安」
   出席:有限会社東京渥美組代表取締役 舟戸 仁他

(注)*1: チェルノブイリ原子力発電所(ChNPP=Chernobyl Nuclear Power Plant)
*2: スラヴィティチ・トレーニング・センター(STC=Slavutych Training Center)
*3: プレアデス社(Plejades、ドイツのグリースハイムに本社を置き、原発問題で世界各国の政府・研究機関、
   石油・ガス・電力会社などを顧客としてコンサルタント活動を行う独立専門家集団。)
*4: チェルノブイリ立ち入り禁止区域(CEZ=Chernobyl Exclusion Zone)

 

※有限会社東京渥美組(国土交通大臣 許可(般-17)第21582号/ 代表取締役舟戸 仁)について:本社を大阪に置き、総合建設業・不動産賃貸売買を主事業として全国で事業を行う渥美組のグループ企業。主に土木工事・建築工事・鉄筋工事・大工工事・架設工事・コンクリート工事・解体工事・舗装工事・塗装工事・内装工事・造園工事・さく井工事・その他(工場内・雑作業)に関わる職人・作業員を現場に擁しています。

STC=スラヴィティチ・トレーニング・センター
ChNPP=チェルノブイリ原子力発電所

場所 講師 内容
①STC講義プレアデス社 Plejades ●健康と安全性(作業活動の基本原則)
●汚染現場の作業準備
●放射線とは、放射線防護とは
●放射能の危険性(電離放射線の健康への影響及び比較データ)
●計測・検出及びサンプリングの方法
●地表汚染度の計測と計算結果の解釈(払拭サンプルの重要性)
●チェルノブイリ原発4号炉及び福島第一原発の事故(試行的比較)
②STC講義/トレーニングチェルノブイリ原発公団 ●チェルノブイリ原発事故
・原因と概要 ・復旧作業 ・現状とシェルター・オブジェクト(石棺)
●緊急時対応とトレーニング方法
・作業員の配置前、配置後トレーニング ・初期トレーニング
・K14緊急対応トレーニング ・消火活動と救難作業
●放射性廃棄物管理施設の概要
●チェルノブイリ原発内での放射性物質の輸送
●除染作業(トレーニング)
●安全作業
●ストレスに関して(心理学講習)
③ChNPP講義 チェルノブイリ原発公団 ●チェルノブイリ原発公団・原子力安全部門
●チェルノブイリ原発内での高線量廃棄物の輸送
●使用済核燃料の輸送
●放射性物質の安全輸送規定
●原子力安全保障
●原子力事故における緊急対応
●シェルター・オブジェクト内における個人の対放射線装備
④ChNPP トレーニング チェルノブイリ原発公団 ●チェルノブイリ原発
シェルター・オブジェクトでの緊急避難訓練
●シェルター・オブジェクト内における個人の対放射線装備
●除染作業

 

ウクライナのチェルノブイリ原発事故は1986年4月25日に発生しました。
チェルノブイリ原発のすぐ南側にチェルノブイリの街があったのですが、原発事故による放射能汚染で30km圏内が立入禁止となったために、原発の西側約50km離れた場所に新しく街を建設しました。これが「スラヴィティチ」です。

スラヴィティチはウクライナの首都のキエフから約200km、チェルノブイリ原発からは約50kmの距離にあります。スラヴィティチからチェルノブイリ原発までは専用の電車が通っており、約1時間で通勤ができます。人口は約2万5千人、子供の人口が全人口の約1/3と多いのが特徴ですが、成人の殆どがチェルノブイリ原発で働く作業員のための街です。

 

スラヴィティチにはチェルノブイリ原発公団が運営する「訓練センター」があり、チェルノブイリ原発で働く作業員、技術者、管理職等全ての人がここで一定の訓練を受けることが義務付けられています。訓練内容は「技術者か作業員か」「管理職か一般職か」などにより異なりますが、最大で576時間とほぼ2ヵ月を要する内容の濃いものです。この訓練で「放射能に関する一般的な知識」から「具体的な除染の方法」まで、講義と実習で学んでからチェルノブイリ原発で初めて作業することができるようになります。また、同訓練センターはウクライナの文部省から特別なライセンスを受けており所定の訓練を受けた作業員に「電気ガス溶接技師」「全自動・半自動機による電気溶接技師」「クレーン技師」「除染技師」「放射線計測師」「放射性廃棄物処理資格」「放射性廃棄物管理者」「電離放射線作業安全資格者」等の国家資格を与える権利も持っています。

同訓練センターは放射線環境下で最も多くの経験を積んだ専門家を数多く擁し、チェルノブイリ原発という実際の放射線リスクのある現場での訓練が可能である点から、現時点で世界最高の訓練センターと言えます。

 

東京渥美組代表取締役 舟戸 仁・略歴

・1977年1月1日生まれ。大阪府出身
・2000年芦屋大学・産業教育学科卒業。
・2000年から2年間米国留学。
・2002年㈱USJに入社、フードサービス・マーチャンダイズを担当。
・2003年から2005年まで社会福祉法人・鶴舟会に勤務。
・2005年㈲東京渥美組に入社し、建設部、開発部を経て2006年、代表取締役に就任。
・2012年6月ウクライナ「チェルノブイリ原子力発電所」「スラヴィティチトレーニング・センター」で3週間の「放射線安全処理技術研修」を受講。
「放射線廃棄物管理者」、「電離放射線作業安全資格者」認定を受ける。
・社会福祉主事、第一種衛生管理者、甲種防火管理の資格を持つ。